らくらくラテン語入門
第9回 属格
SALVETE! UT VALETIS? Justusです。
前回は、与格について勉強しましたが、今日は、属格(casus genetivus、ないし、casus genitivus)です。これで、主格・属格・与格・対格・奪格という、最も基本的な5つの格については、学習を完了することになります。やりましたね!
さて、早速説明に入りますが、属格というのは、文字通り、事柄の「帰属」の対象を表現する格です。
例えば、ある本がJustusの持ち物だったとします。このとき、この本はJustusに帰属しています。このことを表現するには、Justusを属格形にします。これはJustiという形になります。
結局、「Justusの本」というのは、
liber Justi
となります。
いろいろと面倒なことを言いましたが、要するに、
属格=「~の」
だと覚えておけば、大体の場合に対応できます。
例えば、「Iuliaの本」なら、Iuliaの属格形のIuliaeを使って、
liber Iuliae
となりますし、「Ciceroの本」なら、Ciceroの属格形のCiceronisを使って、
liber Ciceronis
となります。ちなみに、Cicero「キケロー」というのは、古代ローマの超有名人です。
以上のような使い方は、所有の属格(genitivus possesivus)と呼ばれる使い方なのですが(所有者を表すため)、属格には、それ以外の使い方もあります。
例えば、主体の属格(genitivus subiectivus)という使い方があります。これは、属格がある動作の主体であることを示します。例えば、
amor Justi
というのは、「Justusの愛」ということです。amorというのは、amare(愛する)という動詞の名詞形ですが、この愛するという動作の主体がJustusだということです。
なお、amareの活用は、amo - amas - amat - amamus - amatis - amantです。ですから、同じ情報を文で表すとすれば、
Justus amat. (Justusは愛する)
となります(このことを確認する意味は、あとで分かります)。
話をamor Justiに戻しますが、ここで注目していただきたいのは、ここでもやはり属格が「~の」と訳されていることです。
属格には、そのほかにもいくつか使い方がありますが、いずれも「~の」と訳せば対応できる場合がほとんどです。つまり、ラテン語の属格の語感というのは、日本語の「~の」の語感にきわめて近いということです。ですから、面倒くさいことを考えなくても、属格が出てきたら、「~の」に相当する意味だと考えればよいのです。とても便利ですね。
ただ、一つだけ例外があるので、これだけ取り出して学んでおきましょう。これは、対象(客体)の属格(genitivus obiectivus)と呼ばれるものです。先ほどとまったく同じ表現ですが、
amor Justi
という表現が、「主体の属格」ではなく、「対象の属格」である場合もあります。これは、主体の属格の場合と違って、
Justum amat. (Justusを愛する)
という文が名詞句になった場合です(ここでは便宜的に主語を「彼/彼女」にしましたが、文脈によって、「私(たち)」である場合もあれば、「あなた(がた)」「彼(女)ら」である場合もあります)。
この場合、「Justusの愛」と訳してしまうと、「主体の属格」の意味になってしまいますから、ラテン語の属格と日本語の助詞「~の」の語感は同じではありません。
こういう場合は、「Justusに対する愛」とか、「Justusへの愛」という日本語に置き換えることができます。
第9回 練習問題:穴埋め問題
次の表現を、主体の属格(1)と対象の属格(2)の二通りに書き換えてみてください。
amor Iuliae
- ( ) amat.
- ( ) amat.
いかがでしたか?
- Iulia(主格)
- Iuliam(対格)
が正解です。
第9回 まとめ
- 属格(genitivus):日本語の「~の」に近いことが多い。
- 所有の属格:所有者を表す。「~の」に近い。
- 主体の属格:動作の主体を表す。「~の」に近い。
- それ以外の場合にも、「~の」に近いことが多い。
- 対象の属格:動作の対象を表す。「~の」ではない!
それではまた! VALETE!