らくらくラテン語入門
第5回 奪格(2)、動詞の活用―現在時制(1)
前回は奪格を使った「e ... venio」という表現をやりました。ちょっと復習しましょう。
ex Iaponia venio. insulae Iaponicae bellae sunt.
「日本出身です。日本の島々は美しいです。」
ex Hokkaido venio. Hokkaido insula bella est.
ex Honsio venio. Honsium insula bella est.
e Sicoco venio. Sicocum insula bella est.
e Ciusio venio. Ciusium insula bella est.
ex Okinava venio. Okinava insula bella est.
北海道・本州・四国・九州・沖縄はこういう風にいうそうです。もっとも、例によって人によって言い方が違ったりするので、臨機応変にやってください。
日本の神話によれば、日本列島はイザナミノミコトのお腹から生まれたそうですが、多分これは世界一スケールの大きい神話だと思います。日本列島が出てくるくらいですから、イザナミノミコトは日本列島の何倍も大きな存在だったということでなければつじつまが合いません。ローマにも、ロムルスとレムスという建国者は狼に育てられたという神話がありますが、日本の神話と較べるとスケールが小さく感じられます。
さて、閑話休題、出身地の紹介も済みましたので、今日はどこに住んでいるかという話をしてみましょう。これには、habito(不定形は habitare)という動詞を使います。フランス語やイタリア語をやっている人はおなじみですね。「住む」という意味です。
in Sapporia habito. Sapporia oppidum magnum est.
in Sendaio habito. Sendaium oppidum magnum est.
in Tochio habito. Tochium oppidum magnum est.
in Nagoia habito. Nagoia oppidum magnum est.
in Meaco habito. Meacum oppidum magnum est.
in Osaca habito. Osaca oppidum magnum est.
in Fukuoka habito. Fukuoka oppidum magnum est.
順に、札幌・仙台・東京・名古屋・京都・大阪・福岡です。二つ目の文は、「~は大都市だ」という意味です。
Meaco, Meacumというのは、どうやら「ミヤコ」から来たようです。念のため、mecum「私と一緒に」とこんがらないように気をつけてください。ちなみに、英語で「vade mecum」(私と一緒に行ってくれ)というと、「便利で常時携帯する物(特に本)」を意味するそうです。英語式の発音は、何と「ヴェイディ・ミーカム」らしいです。脱力・・・。
よく見ると、「ヴァーディ・メイクム」という発音もあるらしいです。まあ、「メイ」の部分が気になりますが、「ミーカム」よりましかな。
さて、前置詞inのあとの格は何でしょうか?
簡単ですね。奪格です。ですから、aで終わる場合には、長音で読みましょう。
このように、動きがなく、固定したイメージでinを使う場合(「中で」)には、奪格支配になります。反対に、もっと動きを表す場合(「中に」)には、対格をとります。
ドイツ語でも、動きを表す場合には、「ins Bett gehen」(ベットに行く)「ins Kino gehen」(映画に行く)などと対格でいいます。これと同じです。これに対して、動きを表さない場合ですが、ドイツ語には奪格がないので、代わりに与格を使います。
と、いろいろ説明しましたが、とりあえず他の格のことは忘れて、奪格のことだけ覚えましょう。
- 奪格・対格支配の前置詞が奪格支配で使われるときは、固定したイメージで使われる。
- inは奪格支配の場合がある。
この2つのルールを理解できていれば、バッチリです。
さて、今度は動詞に注目してみましょう。基本となるのは次の例文です:
Iaponica sum. ex Honsio venio. in Tochio habito.
意味はいいですね?
「私は日本人で、本州出身で、東京に住んでいる」ということです。また、Iaponicaとなっているので、「私」は女性の方だと分かります。
これを、少しいじってみます:
Iaponica es. ex Honsio venis. in Tochio habitas.
Iaponica est. ex Honsio venit. in Tochio habitat.
Iaponicae sumus. ex Honsio venimus. in Tochio habitamus.
Iaponicae estis. ex Honsio venitis. in Tochio habitatis.
Iaponicae sunt. ex Honsio veniunt. in Tochio habitant.
それぞれどういう意味でしょうか?
少し考えてみてください。
しっかり復習している方は、特に説明しなくても分かると思います。
・・・・
考えてみましたか?
esseの活用は、
sum - es - est - sumus - estis - sunt
でしたね。つまり:
- esは「あなたは~」(二人称単数)
- estは「彼女は~」(三人称単数)
- sumusは「わたしたちは~」(一人称複数)
- estisは「あなたたちは~」(二人称複数)
- suntは「彼女たちは~」(三人称複数)
だったわけです。そうすると、同じように
- venis・habitasは「あなたは~」(二人称単数)
- venit・habitatは「彼女は~」(三人称単数)
- venimus・habitamusは「わたしたちは~」(一人称複数)
- venitis・habitatisは「あなたたちは~」(二人称複数)
- veniunt・habitantは「彼女たちは~」(三人称複数)
だと推理できるのではないでしょうか?
それで正解です。
このことを頭に入れつつ、例文をもう一度読んで、今回はおわりにしましょう。
Iaponica sum. ex Honsio venio. in Tochio habito.
Iaponica es. ex Honsio venis. in Tochio habitas.
Iaponica est. ex Honsio venit. in Tochio habitat.
Iaponicae sumus. ex Honsio venimus. in Tochio habitamus.
Iaponicae estis. ex Honsio venitis. in Tochio habitatis.
Iaponicae sunt. ex Honsio veniunt. in Tochio habitant.
第5回 まとめ
- 奪格
- 奪格・対格支配の前置詞が奪格支配で使われるときは、固定したイメージで使われる。
- inは奪格支配の場合がある。
- 動詞の活用
- habitare: habito - habitas - habitat - habitamus - habitatis - habitant
- venire: venio - venis - venit - venimus - venitis - veniunt